ビニールハウス被害の実態
ハウス被害の原因として、大きく風害と雪害があげられます。
最も頻度が高いのは風害で、被覆資材のはがれのみの軽微なものから、倒壊全損のような甚大な被害までを合計すると、被害の全体の8割以上を占めます。
一方で雪害の場合、被害件数は少ないものの、倒壊全損に直結しやすく、深刻な被害をもたらします。
地域別被害割合
雪害対策は前もって準備を
雪害被害が多くなるのは積雪の多い 1 月と 2 月ですが、気温が上がって水分を含んだ雪が降る 3 月頃にも注意が必要なので、前もって対策を立てることが大切になってきます。
\ 詳しくは「ハウス丸わかり教本」に掲載しています。ぜひこちらもご確認ください。 /
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被害発生の原因から対処方法までわかりやすく解説!
ハウス丸わかり教本
雪害による被害発生のメカニズム
雪害による被害発生には様々な要因があります。
メカニズムを知ることで、ご自身のハウスの立地条件に適した対策を立てることが可能です。
※丸屋根式ハウス単棟の場合を中心に記載しています。連棟ハウス、切妻型、ダッチライト型やスリークォーター型のハウスには必ずしも当てはまりません。予めご了承ください。
ビニールハウスが雪から受ける力
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雪が真下に降り積もる場合、ハウスの屋根に堆積する雪の荷重に加え、側面に堆積した雪や屋根から滑落した雪による側圧がかかります。
さらに積雪が進むと、ハウス肩部に堆積した雪の沈降圧がハウスを圧迫します。 -
1.雪+風
積雪には多くの場合、風が伴います。
屋根面に堆積する雪は、風のために片寄りが生じ、メディアで報道される堆積深より多くの雪がハウスに積もり、ハウスに大きな負荷がかかります。 -
2.ビニールハウスが複数棟並んでいる場合
ハウスどうしが並んで建設されている場合、ハウスどうしの間に屋根面から滑落した雪が積もり、
単棟の場合より早い段階で側圧がかかります。また、同様に沈降圧も加わりハウスを強く圧迫します。 -
3.連棟式ハウスの場合-1 ~単棟ハウスとの積雪過程の違い~
1降り始めの雪は屋根形状に沿って堆積します。
2雪が降り続くと屋根からの滑落した雪が谷部に溜まります。
3屋根面全体が水平になるように積雪し、
谷部に大きな力がかかります。 -
4.連棟式ハウスの場合-2 ~融雪時の注意~
1ハウスに積雪が見込まれるときは、暖房機を稼働させて融雪します。
2その際、ハウスの表面温度が上がっていない部分があると、雪どけ水をブロックしてしまいます。
特に、谷部でこの状態になると、雪どけ水が流れきらずに、谷樋をオーバーフローしてしまいます。3オーバーフローした水が谷柱を伝い、基礎部周辺を浸潤していきます。
4柔らかくなった土が、基礎部にかかる荷重を支えきれず沈下します。
5さらに積雪した場合、谷樋部の沈下にとどまらず、ハウス全体の倒壊につながります。
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5.二重張りハウスの場合
1一重張りハウスの場合、ハウス内の暖かい空気がフィルム面を暖めることにより、雪とフィルムの接触面に融水が生じ、雪が滑落します。二重張りハウスの場合は断熱層があるため、外層フィルムに熱が伝わりにくく、屋根部の雪が滑落しない場合、沈降圧が大きくなる傾向があります。
2暖房機を使う場合も、上記と同様の理由により、外部へ熱が伝わりにくいため、早目に暖房機を入れる必要があります。
3結果的に一重張りのハウスに比べ、雪が滑落しにくい場合、上からの沈降圧によりハウスが倒壊するリスクが高くなります。
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被害発生の原因から対処方法までわかりやすく解説!
ハウス丸わかり教本
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ビニールハウス新設時の確認ポイントと流れ
ビニールハウスの立地・周辺状況による対策
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1.ハウスどうしの距離
すでにハウスが建っている場合、または何棟か並べて建てる場合は、ハウスどうしの間隔を2m以上離してください。
ハウスどうしの距離が近いと・・・
●側面換気の換気効率が下がってしまいます。
●降雪地域では、ハウスとハウスの間に雪が溜まり、ハウスが破損する原因になります。
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2.ハウスが複数棟並んでいる場合
ハウスどうしが並んで建設されている場合、ハウスどうしの間に屋根面から滑落した雪が積もり、
単棟の場合より早い段階で側圧がかかります。また、同様に沈降圧も加わりハウスを強く圧迫します。
ビニールハウス全体を強くする
平行タイバー・伸縮タイバーと束で補強する
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1.被害のメカニズムと補強ポイント
●ハウスの側面に圧力がかかると、柱に圧力がかかって内側に倒れこみます。柱の変形とともに、棟部は上方に押し上げられます。
●ハウス内部にタイバーと束を取り付けることによって、ハウス側面への圧力に対して補強できます。
●軒から屋根高までの高さ(h)の1/4の位置に、タイバーを取り付けるとより効果的です。
●タイバーをアーチパイプ4スパンごとに取り付けると、耐風性能は約6%、耐雪性能は約43%アップします。(「平成26年2月の大雪被害における施設園芸の被害要因と対策方針」より)
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2.必要な部材
クロスタイバーで補強する
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1.被害のメカニズムと補強ポイント
●ハウスの側面に圧力がかかると、柱に圧力がかかって内側に倒れこみます。柱の変形とともに、棟部は上方に押し上げられます。
●クロスタイバーを取り付けることで、タイバーと束による補強と比較して、より高い効果を得ることができます。ただし、アーチパイプの肩部あたりに取り付けることになるため、他の設備(カーテンや内装など)と干渉することがあります。
●軒から屋根高までの高さ(h)の1/4の位置に、クロスタイバーを取り付けるとより効果的です。
●クロスタイバーをアーチパイプ4スパンごとに取り付けると、耐風性能は約9%、耐雪性能は約65%アップします。(「平成26年2月の大雪被害における施設園芸の被害要因と対策方針」より)
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2.必要な部材
耐雪支柱を設置する
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1.被害のメカニズムと補強ポイント
●雪が真下に降り積もる場合、ハウスの屋根に堆積する雪の荷重に加え、側面に堆積した雪や屋根から滑落した雪による側圧がかかります。さらに積雪が進むと、ハウス肩部に堆積した雪の沈降圧がハウスを圧迫します。
●ハウス内の中央部に耐雪支柱を設置することで、ハウス棟への圧力に対して補強することができます。
●連棟ハウスの場合は、谷下に支柱を取り付けください。
●間口6mのハウスに対して3m間隔で支柱を設置すると、耐雪性能が25kg/m²アップします。(「平成26年2月の大雪被害における施設園芸の被害要因と対策方針」より)
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2.必要な部材
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「強いビニールハウス」を維持する日々の保守管理
雪害以外にもハウス被害の原因はさまざまです。甚大な被害を抑えるために大切なのは日々の点検・保守を行うことです。点検項目と管理方法のポイントについてご説明いたします。
サビによる強度の低下
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現象・点検
ハウスの耐性・強度を下げる大きな要因は、パイプなどの骨組みに発生するサビです。特に地際部分は最も腐食しやすく、かつハウス強度において重要な役割を果たしますので、チェックを怠らないようにしてください。
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処置
やすりを使いサビをすべて落としてください。(ケレン作業)。その後、市販の亜鉛メッキスプレーなどで塗装し、サビの進行を抑えます。
スーパーチギワガード
ハウスの中でも特にサビが発生しやすい地際部分の耐蝕性を高めた農ビ管です。新設ハウスの場合は、ぜひ、スーパーチギワ付きパイプをご採用ください。
積雪に対する保守管理
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1.雪の自然落下を促進させる
暖房機などを稼働させてフィルムの表面温度を4℃以上に保ち、ハウス屋根の雪を落下させることで、ハウスへの積雪の軽減が図れます。
積雪の軽減させる目的で暖房機を稼働させる際は、内張り資材などを開き、屋根面からの放熱量を増加させてください。
なお、近年の燃油高などの対策で増加している、複層フィルム構造になっているハウスでは、断熱効果により屋根面からの放熱量が減少しますので注意が必要です。
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2.除雪作業をこまめに行う
側面に落下した雪が軒高より高くなると、軒先に沈降圧が加わってハウスを破損します。特に、肩部(イラストの■部)に雪が堆積するとハウス倒壊の危険性が高まります。除雪作業をこまめに行ってください。
重要!
積雪作業は転倒によるけがや雪の滑落に巻込まれるなど、重大事故につながる恐れがあります。
作業を行うときは、必ず2人以上で行い、足場を確保するなど、十分に注意してください。
ポイント
除雪作業の際、除雪機を稼働させるときは、ハウスに対し側圧がかからないように配慮してください。
投雪を同時に行う除雪機の場合、ハウスに投雪がかからないように注意してください。
また、雪の堆積場所をあらかじめ決めておき、計画的な除雪作業を行ってください。
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