営農通信バックナンバー

2026.09.09

ミニトマト

【八街農場】 2025シーズンの総括 (ミニトマト)

〇はじめに


少しずつ暑さが和らぎ、秋らしさを感じる日も増えてきました。

長期多段栽培の方式を採用しているミニトマト生産者は、新しい作がスタートしている方も多いかと思います。

ここで一度、前作を振り返り、上手くいった点・改善点を洗い出し、より良いシーズンを迎えられるようにしましょう。

今回は、八街農場の2025年シーズンの総括をご紹介します。


〇2025 年シーズンの総括


◆日平均気温と市場価格の推移

ⅰ)八街農場の昨季との気象データ比較


(八街農場 UTNET より引用)

月別の日平均外気温を比較すると、2025年シーズンは

・序盤の10月の日射量が少なかった

・9~11月の秋頃は前年より気温が低かった

ことがわかります。

八街農場ではこの時期に光合成量が足りず、徒長による樹勢の低下や果実の小粒化などが生じました。


ⅱ)市場価格


農林水産省 東京都中央卸売市場 卸売価格(トマト)の推移より引用

(https://www.maff.go.jp/j/tokei/syohi/oroshi_kakaku/seika.html)


上記のグラフより、

・8月~10月は暑さの影響を受け、前年同様に平年値より高い水準

・11月価格に価格が急騰。前年と比較して最大1,000円ほど高い

・2月以降は平年並みに推移

ことが読み取れます。


11月の高騰は、全国的な平均気温の上昇による夏場の高温障害の影響が続いたことや10月の日射不足の影響、

産地での天災の影響などから出荷数が減少したことに起因すると推測されます。

 

暑さが厳しい近年に多く見られますが、夏~秋にかけての価格が平年値を上回る傾向にあります。

長期多段栽培で収穫初期のこの時期に安定した収量を得ることは、経営の安定にもつながり、

そのためには夏場の高温対策は必須です。


◆  八街農場の2025シーズン年振り返り


ⅰ)2024シーズンとの収量比較


↑ 2024、2025年シーズンの月別収量比較



↑2024、2025年シーズンの累計収量比較


10月から4月にかけて、今作の収量が前年を上回っており、累計では約16 t上回っています。

これは、トマト黄化葉巻病の感染数が昨年よりも大きく下回ったことによるものが一因だと思われます。

今作より、半数の品種でTY品種(トマト黄化葉巻病に対する耐病性を備えた品種)を導入しております。

2本仕立てによる地下部への負荷を考慮し、強勢台木を採用しました。



↑TY品種を2本仕立てにした様子


また、トマト黄化葉巻病の発生により、伐採を余儀なくされた箇所には補植・増枝を行い、

最終的な栽植密度は約2,500~2,800株/反でした。

1本仕立ては黄化葉巻病に耐性のない品種のため、罹患・伐採の影響を避けるために積極的な増枝を実施しました。

その結果、終盤株数が定植時の本数よりも多くなり、収量の増強に貢献しました。


2本仕立ては黄化葉巻病に耐性のあるTY品種ではあるものの、

シーズン終盤までにその他の病害や生理障害のため伐採となる株もあり、終盤株数と定植時の本数はほぼ変わりませんでした。

TY品種に関してもより増枝を行うことで、更なる増収が期待できた可能性があります。

※株数の増減に合わせて、品種ごとの灌水量も都度設定していきましょう。


ⅱ)生育調査結果




↑TY品種・非TY品種の比較


上記のグラフの通り、2本仕立てでもシーズンを通じで高い樹勢(平均茎径)を維持しており、

前年比+16tの増収に大きく寄与しました。

次作でも引き続きTY品種を定植予定です。

課題としては栽培序盤の8月~11月にかけて、樹勢が低下(茎径が細く徒長)しています。

次作では序盤の光合成強化を施していきます。

 

◆病害虫の発生


ⅰ)黄化葉巻病の多発

2025年シーズンも全国的にトマト黄化葉巻病の発生数が多く、千葉県内でも過去最多の発病数でした。

同時に、タバココナジラミの成虫寄生株率も過去10年で最多を記録しています。

https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/press/2024/20240918tyuihou05.html



↑ トマト黄化葉巻病に感染した様子


八街農場では9月中旬~10月半ばの発生ピーク期に対し、IRAC系統分類に基づいた異系統農薬のローテーション散布と、

物理的に呼吸を阻害する気門封鎖剤を組み合わせました。

その結果、10月半ばの黄色粘着シート捕殺数は、2024シーズン(48.6匹/枚・週)から16.8匹/枚・週へと約65%減少しました。

 

ⅱ)灰色かび病の多発

千葉県内において、トマト灰色かび病の発病株率が過去10年と比較して最も高かったことが報告されています。

https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/boujo/documents/20260318hassei06.pdf(千葉日報より引用)


八街農場でも一部品種で灰色かび病が多発しました。



これは、2月下旬からの気候の変化によって灰色かび病の発生が助長されたと推察されます。



↑2025作の1~3月のハウス最高湿度・最低外気温(八街農場 UTNETより引用)

 

灰色かび病は冷涼かつ高湿度で多く発生します。

上記グラフから、八街農場では2月22日付近から最低外気温(夜間の外気温)が上昇し、

暖房機の稼働率が減少したことで最大湿度(夜間の湿度)が100%を記録する日が多くなったことが読み取れます。

これにより灰色かび病の発生条件が整い多発したと考えられます。

 

八街農場では感染拡大を防ぐため、

1. 農薬散布:治療薬→予防薬の順に散布

2. 作業の分離:通常作業(収穫・葉かき)とは別に、病斑部切除のみを行う作業を設定

3. 器具の衛生管理:1列作業ごとにハサミを消毒

を行いました。


次作では、気象状況を確認しながら事前に予防効果の高い殺菌剤の散布を行うことに加え、

夜間湿度が高くなる時期には暖房を使った除湿も行っていきます。



〇おわりに


前作をしっかり振り返ることで、新たな課題も見えてくると思います。

更なる増収のために、前作の反省点を早めの対策に繋げていきましょう。

次号では、2026シーズンからの新たな取り組みについてご紹介します。