〇はじめに
4月に入り、気温と日射量が高まっています。
これからの時期は植物、収穫物ともに高温障害の発生を防ぐことが重要となってきます。
そこで、今回は暖候期に発生する高温障害についてご紹介します。
〇高温障害について
◆そもそも高温障害とは??
【尻腐れ果】→カルシウム欠乏
【花落ち、着果不良】→花粉の稔性低下、マルハナバチの活動低下
【萎れ】→灌水不足など
等、ハウス内の高温によって引き起こされる障害のことです。
◆特にカルシウム欠乏に注意
高温環境でカルシウム欠乏は起こりやすいと言われています。
特に、尻腐れ果は気温、日長、日射量が上昇する晩春~夏にかけて多発します。
一般に温度が高い程トマトの生長速度も速くなり、それに伴ってカルシウム要求量も増加します。
また、カルシウムは根から吸収され、道管を通って果実に供給されますが、
葉から実などの植物体内の移動(師管を通じた移動)はほとんどないことが知られています。
同時に、強日射条件下では光合成が活発に行われ、葉からの蒸散も盛んになります。
この時導管流が抑制され、葉との競合により果実へ供給されるカルシウム量が減少してしまいます。
その結果、カルシウム欠乏症が起こりやすくなります。
八街農場では欠乏症の対策として、週一回程度を目安にカルシウム剤を葉面散布しています。
↑シシリアンルージュで見られた尻腐れ果
◆なぜ花粉の着果不良が起こるの?
一般的に、トマトの生育適温は約15~25℃と言われています。
しかし、30℃以上の高温に遭遇すると、
花粉の受精能力である「稔性」が低下し、着果不良を起こします。
( https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/seikafukyu/documents/r303houseyokuseitomato.pdf )
↑着果不良により花落ちした様子
八街農場では、受粉のためにマルハナバチを放飼しています。
このマルハナバチの活動のために最適なハウス内温度は17~28℃です。
30℃を超えると著しく活動が低下します。
このため、高温条件下では訪花活動が行われないことによって受粉ができず、着果しないこともあります。
◆灌水不足が及ぼす影響
上記でも述べたように、日射量の増加に伴って葉からの蒸散量も増加します。
このタイミングで灌水量が不足すると、蒸散に対して根からの給水が間に合いません。
その結果、根から遠い上位葉の萎れや、微量要素の欠乏による葉先枯れ、
カルシウム不足による尻腐れ等が起こってしまいます。
◆逆に遮光ばかりしていると?
日照不足により生長点が細くなり、徒長してしまいます。
徒長は本来、植物体内の窒素過剰によって引き起こされます。
しかし遮光により、光合成量が低下し細胞壁が薄く軟弱に合成され、
より光を求めて上へ上へと伸びることにより、徒長を助長してしまいます。
カーテンによる遮光は、ハウス内温度が設定したピーク温度よりも上昇してしまう時に限定する等、
補助的な使用を目指していきましょう。
また、曇天等で日射量が不十分な中で過湿状態が続くのも徒長になりやすくなってしまいます。
過灌水にならないよう、天候を見て都度設定を変えていきましょう。
◆果実への影響
尻腐れ果の多発以外にも、日焼け果や裂果が発生するおそれがあります。
日焼け果は、着色に影響するリコペンが30℃以上になると生成され辛くなることが原因です。
果実の肩の部分が黄色く変色してしまいます。
裂果は、果実への直射日光により果皮が硬くなり、伸長性が悪くなったところで吸水肥大により起こります。
また、果実に直射日光が当たることで、果実の温度がハウス内温度よりも高くなり、軟化果が発生することもあります。
( https://agresearcher.maff.go.jp/seika/show/214503?utm_source=chatgpt.com )

左:直射日光と高温により、軟化した様子
右:裂果の様子
〇高温障害を出さないために
◆ハウスの制御設定を見直す
まずは換気を上手く使用し、ハウス内温度の上昇を防ぎましょう。
八街農場では、3月半ばに冬用の内張りカーテンの使用を止め、サイド換気も使用しています。
◆灌水量・頻度を見直し適正な排液率を維持
同時に、灌水設定も見直していきましょう。
冬に比べ日射量、平均気温も上がり、水分要求量も増加します。
八街農場では、日射比例制御を使用し、積算日射量が設定値に達する度に灌水するよう設定しています。
排液率を調査し、灌水不足・過灌水になっていないかを都度確認していきましょう。
◆高温対策資材の導入
渡辺パイプでは、暑さによる品質低下・収量の減少などでお悩みの農家様へ、高温対策資材の導入を提案しております。
高温対策資材と効果については、次号でご紹介します!
〇おわりに 春先は気温や日射量の上昇に伴い、高温障害が発生し始める時期でもあります。
高温障害の発生はトマト栽培において悪影響を及ぼします。
生長点の様子や欠乏症の有無をよく観察し、適切な制御設定に変更していきましょう。